雪 蛍

鬼灯の鳴るたび闇の深くなり
銀漢に連れていかれし思想犯
陶製の鳥の目泣いている白露
もう秋の海かあの日の出来事も
菊枕 誰の土産にしようか
秋夕焼水っぽくなる景色かな
石狩川治水の歴史萩の声
庭下駄の親指さみし一位の実
ひと枡の小豆の息を整える
本題に入る前から雪蛍
古本屋に行くセーターに首うめて    
地番まで辿りつきたる初の雪
結び目は解けるものを式部の実
今朝の雪訃報ゆっくり立ち上がる
先生に葉書一葉小六月
ごそっと金柑女偏が集まっている
十二月八日二つの膝頭
年の瀬のカフェお席はご自由に
冬木立ざらりと一日昏れにけり
防人の歌が聞こえる大冬野
風邪心地夢という夢うしろ向き
蛤に触れるそろそろ夕暮れる
実千両二つ三つは櫂の音
平成の尾につながって牡丹雪

2019年(平成31年) 上期 氷原帯投句作品
 

- 83 -
  

【花畔・網】