白 紙 な り

饒舌となりて春愁深くする
春袷病みいし母の肩に添う
白紙なり心に雀入りくる
しゃぼん玉子はけがれなき夢とばす   
連翹や友をかくして咲きにけり
めんめんとこだわる夜の髪洗う
髪濯ぐ十指にあまる思いかな
浴衣着て少女の素足伸びをする
縁側の繰言もよし青梅かな
喪の帯を解きつつありぬリラ冷えに
野いちごに触れしこの手の少女期は
端居する夫なきあとの母の膝
新盆の香さりげなくくゆらする
大根の花揺れ燗のよき加減

1983年(昭和58年) 氷原帯投句作品 (この年5月,氷原帯俳句会入会)
 「氷原帯」は昭和24年細谷源二氏により創刊された。昭和58年当時の主宰は川端麟太氏。 

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