無 頼 に も

木の実降る降るたまには無頼にも
不意打ちに合っていつしか藤の実に   
この世にもちょっと疲れて月夜茸
抽斗に頭を入れていて火の恋し
振り返るたびに濃くなる冬すすき
聞き流すこと二つ三つ柿なます
綴じ紐のすこしゆるみし小六月
冬晴れや上手に爪を切ってから
ねんごろになって四日の硯かな
バンダナで包む重箱初電車
白鳥湖見てきたような偏頭痛
雪女郎立つも座るも故郷に
冬の雷こうこうとある蛇口
階段の暗がり二月の置き所
春の月母と分かちし菓子のこと
月朧カンフル剤の匂いかな
勘助の銀の匙から春の蝶
白鳥の脚の我儘見てしまう
さくらからさくら冥土の中におり
ジグソーの一片足らずイヌエンジュ
筍の産毛に触れてからお茶に
ふっと死が通り過ぎたる今日立夏
吊り橋を上手に引いている夏日
手枕の宇宙わたしに夏の海
曝書してつくづく独り芥子の花
セロリ折るなにか忘れてきたような
らしからぬこと言ってみる夕端居
ふるさとに出口入口反魂草

2011年(平成23年) 氷原帯投句作品
 

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