番 地

身ほとりにわずかな発火秋隣
女より男がめめし秋の虹
捩花や本気モードの恋をして
藤袴多分愛とはこんなもの
本棚にまた住み出した雪蛍
熱燗の首がもっともさみしがる
人を待つ枯野人間くさくなる
札幌がゆっくり融けて冬紅葉
挨拶の途中ですが雪ばんば
わたしにもマスク日和のありにけり   
冬帽子誰も私を知らぬ駅
年の瀬という匂いあり番地あり
鍋底の余熱に触れてから雪夜
どんどの火見つめ一人試される
ちりちりと滑る雪の粉どんどの火
降りて来よきみ白菊を超えて来よ
襖にもある右ひだり雪晴れ間
中七が行方不明に雨水かな
三輌の学園都市線目借時
寒の水手術同意書書き終える
シーツごと置かれし身体二月尽
手術終わる春の砂丘がうろうろす
麻酔覚む枕の上の遊糸かな
桜まで歩いて行ける麻酔あと

2013年(平成25年) 上期 氷原帯投句作品
 この年,氷原帯新主宰に山陰進氏。 

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