JavaScript を必ず有効にしてください。無効になっていると正常に表示されません。

河口砂嘴の地形変化 - 総集編

(A) 先端部の季節的変化
2009 - 2019

2017.05.15 公開
2020.11.21 更新

■ 公開にあたって

GPSロガーを携行して,河口砂嘴先端の地形調査を本気になって始めたのは2009年の春。
今年は2017年。10年をひと区切りとするならば,その目前の9年目突入です。
正直いってこんなバカげたこと,いつまで続けられるかわかりません。
とりわけ厳寒期の浜歩きが辛くなる一方です。

そんな思いもあって,重たい腰を上げての”総集編”作りです。
いろいろなページに書き散らかしてはきましたが,体系化するには至っていませんでした。
まずはここまでの8年間の各年の動きを,同じ仕様でデータ化(画像化)してみようと思います。

まず最初は,
季節的変化のまとめです。

なんども書いたり云ったりしてきましたが,砂嘴の変化には明らかに季節的な一定のパターンがあります。

夏季 = 春から秋まで ⇒ 砂嘴先端が川側から海側へ(右から左へ)と揺れる
冬季 = 秋から春まで ⇒ 砂嘴先端が海側から川側へ(左から右へ)と揺れる
右へ左へ揺れると書いたが,土地そのものが揺れるわけではない。
浸食と堆積の繰り返しによって,見かけ上揺れているように変形しているわけである。
もちろん相手は自然現象ですから,その動きがものの見事に現れる年もあれば,かなり曖昧な年もあります。
例外を一切許さないぞなどと頑なな態度で臨むと,打ち砕かれることだってありえるのです。
自然は奥が深く,一筋縄にはいきません。
しかし,自然の悪戯に出くわしてギャフンとなったのは実はたったの1回だけ(2016年の冬季データ)。

これ以降ギャフンが続出することのないことを願いながら公開に踏み切りました。



● 各年各季ごとにそれぞれ5回のデータ(汀線軌跡)を示してあります。

● 冬季の最後の回のデータと次の夏季の最初の回のデータ,
  夏季の最後の回のデータと次の冬季の最初の回のデータ は,同じ日付のデータを用いています。

● 冬季の最後の回(= 夏季の最初の回)は各年概ね3月下旬で揃っています。
  一方,夏季の最後の回(= 冬季の最初の回)は9月から10月で各年にかなりばらつきがあります。

● 1枚の画像の中の5回のデータの線色は,データの日付順に
 
 ⇒  ⇒  ⇒ 水色 ⇒   の順に色分けしてあります。
  つまり,各画像においてはいずれも,
暖色から寒色に向かって日付が進みます。

● 砂嘴先端の位置については,来札水制工延長線との比較で伸び縮みの度合いを推し量ってください。

● 使用した Google earth の背景画像の画像取得日は 2016.09.27 です。



なおこのページは未完成で,まずは画像のみの暫定公開です。
各年についてのコメントほか,これから随時書き込んでいくことになりますのでご承知おきください。

(画像をクリックして拡大してください)
(2017.05.15)

各年についてのコメントを記述しました。
うしろに,コメント欄についての注釈を付記してあります。
(2017.05.31)

2017年の夏季,冬季分を追記しました。

今年(2018年)は,10年計画の最終年となります。あと12ヶ月なんとか全うしたいと思います。
その後どうするかについてを語るにはまだ尚早かとは思います。
おそらく体と車が動く限りは砂嘴をほっつき歩くとは思いますが,この形式で
自らデータを纏めることはメンドクサイのでやめるでしょう。
ここで
自らと書いたのはある種の含みです。
引き継いでくれる(若い)人がいたら大歓迎なのです。


(2018.03.15)

2018年の夏季,冬季分を追記しました。

(2019.08.09)

2019年の夏季,冬季分を追記しました。(new)

なんとか11年めのデータを追記することができました。
この冬(来年3月まで)も歩くことができたら,そしてメンドクササを克服できれば,12年めのデータも公開することができるかもしれません。

(2020.11.21)

夏季 冬季 コメント



2009年
夏 典型的な夏型パターン
4/中の融雪による増水で川への張り出し部分が削られる。
7/19前線を伴う低気圧の通過で大雨。7/20河口水位は96cmに達し川岸は一気に後退した。沿岸漂砂もかなり増加したものと思われる。
冬 典型的な冬型パターン
沿岸漂砂の動きにより,秋も堆積局面が継続,先端が成長する。
12/31-1/1強い冬型気圧配置で海大荒れ高潮。逆流により河口水位は105cm。成長していた先端が削られる。

調査を始めた最初の年に,夏冬ともにわかりやすい特徴的な動きをみせてくれたことが,その後も継続して調査することへのひとつの励みになったことは疑いない。



2010年
夏 典型的な夏型パターン
3/21低気圧の通過により暴風(最大風速・西北西16.5m/s)と大雨。高潮と増水が重なって河口水位は110cmに達する。川岸はやや後退。
5/上の暖気による融雪,および前線通過による大雨で河口水位80cm前後の状況が長引き川岸後退。
5/中から6/,川も海も平穏で先端が大きく伸び出す。水制工延長線からおよそ55m。
7/下から8/にかけての低気圧,台風による大雨の水勢で,伸びた先端は削られる。
冬 典型的な冬型パターン
10/26早くも冬型気圧が強まり海が荒れて高潮による河口水位は100cm。先端がやや川方向へ押し戻される。
先端が扁平になって川側へせり出すというのがひとつの冬型パターンなのだが,12/下から1/下にかけてこの動きを導いた特異な気象条件が見当たらない。冬型暴風による高潮も,河口水位でせいぜい73cmどまり(1/6)。



2011年
夏 典型的な夏型パターン
4/中から5/上にかけて融雪,降雨などiにより4回ほど河口水位上昇(80〜90cm強)。4/上までせり出していた川岸は後退。
その後6/7/8/と川も海も平穏。先端が長く伸び出る。水制工延長線からおよそ85m。
9/4-6連続台風12,13号による大雨(河口水位110cm)の水勢で川岸が強く浸食されてさらに後退。伸びた先端も削られる。
冬 やや曖昧な冬型パターン
大きな動きに乏しい冬だった。9/の大雨により沿岸にかなり大量の漂砂が供給されたことが,その要因だったと思われる。
12/5冬型気圧配置で石狩地方猛吹雪。最大風速・西北西16.9m/s。高潮による河口水位は96cmまで上昇したが地形変化はごく僅か。
その後も大きな気象要因は見当たらない。
3/にかけて,川側はもとより海側へも堆積が見られる。



2012年
夏 やや曖昧な夏型パターン
4/4低気圧が発達,最大風速15.5m/sで高潮により河口水位91cm。4/下から雪解けが進む。4/27には増水して河口水位91cm。
このとき後退した川岸のラインはその後夏の間ほとんど変化せず。
6/に入って先端が小さく伸び出す。最大で水制工延長線から30mほど。
6/7/8/川も海も平穏。
9/12気圧の谷の影響で激しい雨。河口水位79cm。出ていた先端が削られる。
冬 やや曖昧な冬型パターン
極端な動きはないが,日を追って全体に海側から川側へと動いている。
低気圧の発達で大荒れ。3/2-3最大風速14.0m/s,河口水位85cm。3/9-10最大風速13.9m/s,河口水位72cm。これらにより先端が川側へと膨らんだものと考えられる。



2013年
夏 曖昧な夏型パターン
4/7-8暴風に大雨が重なる。最大風速13.3m/s,河口水位111cm。先端の川岸が削られ,水制工延長線を40mほど越して突出。このように4/に大きく膨らむのは特異なパターンである。
5/6/7/8/川も海も平穏。先端は短くなりながら,川岸はやや盛り返す。夏パターンとしては曖昧。
冬 典型的な冬型パターン
冬季を通して先端が次第に扁平化しつつ川幅を狭めるようにせり出して,冬型の典型的なパターンを取り戻す。
11/8低気圧が発達し,風(最大風速13.7m/s)と雨で河口水位107cm。
12/15強い冬型配置,石狩最大風速15.0m/sの高潮で河口水位88cm。
さらに1/末には継続して強風の日が続き,これら冬特有の気象条件が作用したものと考えられる。



2014年
夏 普通の夏型パターン
4/4-5前線による雨の増水で川側せり出し部が削れる。
5/17風と雨により河口水位79cmなどで川岸の膨らみが徐々に消滅。
6/中先端100mほど沖合に島状の砂州を確認。8/大雨で河口水位が80cm弱まで上がる日もあったが大きな地形変化は見られず。
8/中-10/上海も川も穏やか。9/9沖合にできていた島と砂嘴が繋がり,結果的に砂嘴先端がひょろ長く伸び出した形となる。
冬 典型的な冬型パターン
11/上12/中発達した低気圧による強い風。11/3は雨も伴い河口水位95cm,12/17は高潮で河口水位75cm。
1/7にも低気圧による強風で,河口水位104cm。
これら冬型気象条件により先端は川幅を縮小するように変形する。



2015年
夏 やや曖昧な夏型パターン
4/3低気圧の発達による雨と風(風速13.9m/s)で,河口水位78cm。川側の凸部が削られる。
2013年より小さいが,4/にもっとも大きく成長する特異なパターン。
5/中には過去最大規模の中海が2ヶ現れたが間もなく干上がり姿を消す。
5/-9/気象的に目立った動きがなく,それに伴って地形的にも変化に乏しい夏だったといえるだろう。
冬 典型的な冬型パターン
10/2発達した低気圧による雨と風で河口水位104cm。
10/25冬型気圧配置による強風(最大風速13.9m/s)で河口水位92cm。
12/26低気圧による高潮で河口水位75cm。
これらにより先端地形を川側へと押し出し,8年間でもっとも川幅を狭めた。
同時にこの冬の特色として,先端部海側の汀線が1/以降厳しく浸食されて後退した。



2016年
夏 典型的な夏型パターン
4/中融雪と降雨による増水(河口水位80cm弱)。3月までに張り出した部分が削られる。その後は8月まで,前年同様動きの少ない年で,そのまま安定するものと思われた。
しかし8/中以降台風7,11,9号が連続して襲来,状況は一変。河口水位は8/17=92cm,8/21=119cm,8/23=108cmを記録。一気に浸食されて先端の川岸が大きく後退する。海側の汀線も3/以降後退したままだったので,8/末時点では先端は過去8年でもっとも痩せ細った地形となる。
冬 みごとな逆パターン(夏型パターンが継続)
8/の増水で河口から流れ出た大量の沿岸漂砂の挙動が注目された。
10/上11/上の暴風による高潮(河口水位80〜90cm)によりいったん先端が押しつぶされた(冬型の動き)が,その後の冬季間は極端な暴風,高潮は観測されなかった。
海側汀線では部分的に浸食されたが,先端近くでは冬にもかかわらず堆積が優勢な局面が続き,砂嘴が海側へと膨らむ夏型パターンに近い動きとなって現れた。
2016年春から2017年春にかけての1年間を通して,川側から海側へと揺れ動く特異な年となった。8月の台風がもたらした浸食と漂砂(堆積)の結果といえる。



(2018.03.30 一部差替)
3/3 ⇒ 3/18

2017年
夏 動きの少ない夏型パターン
その直前の冬季が夏型パターンで経過し海側へと膨らみ続けたため,それ以上海側(左)へ揺れる余地が残されていなかったと考えられる。左右での動きの量は小さい。
9/まで融雪,降雨による河口水位の極端な上昇はほとんどみられず。
昨夏流出した漂砂がまだ河口周辺の沿岸に浅瀬を形成しているものと思われ,穏やかな気象とも重なって砂嘴先端の伸長が確認された。
冬 典型的な冬型パターンに戻る
10/末まで比較的穏やかに経過。
11/11急速に発達した低気圧による強風(最大風速14.9m/s)で河口水位113cm。
12/25 暴風(最大風速18.3m/s)で河口水位100cm。(有義波高6m超)
3/2 強風(最大風速16.8m/s)で河口水位81cm。(有義波高5m超)
これらを中心に海側が浸食を受け川側へと強く押し出された。





2018年
夏 典型的な夏型パターン
4/-6/ 融雪,降雨による水位上昇は少なかった(河口水位でたかだか50cm強)ため,冬季の張り出しは徐々に押し戻されつつもある程度は維持されていた。
7/3 からの大雨で石狩川が大増水,河口水位も一気に上昇,7/5 には110cmを記録。川岸は最大40mほど削られて2016/8/ のレベルまで後退した。伴って流出したであろう沿岸漂砂がその後堆積することにより砂嘴の先端が成長した。
冬 典型的な冬型パターン
9/-12/ 長さの出入りはあるが先端の肥大傾向が継続。
12/末以降冬型気象が強まり,先端が潰され川側へと押し出される典型的な冬型の動きとなった。
2/4 強風(最大風速14.2m/s)で河口水位77cm。(有義波高5m超)
特異な動きとしては,川側へと同時に海側へも一部膨らんでいることである。



2019年 (new)
夏 動きの少ない,あえていえば冬型パターン
川側の汀線は驚くほどに変化が見られない。融雪/降雨による極端な増水はなかったのだろう。
海側でも動きは少ないが,北からの圧力が常時加わっているようで,先端部前浜が浸食され続けている。
夏季にこうしたパターンになるのは川から供給されるはずの沿岸漂砂の欠乏が要因ではないだろうか。
秋の時点では先端浜崖の浸食までには至っていない。
冬 引き続き典型的な冬型パターンで経過
秋以降通常の冬型パターンで北からの圧力はさらに強まる。浜崖も北から徐々に浸食され始め,先端を削った土砂が押し出されて川幅を狭める。
2/下には浸食は管理道路の先端にまで及ぶ。
3/10,11 最低気温もプラスに転じ融雪が進むと同時に降雨により川が増水,その勢いで川にせり出していた突起が押し流されてしまった。
2019年は,2016年と逆のパターンで1年を通して海側から川側へと揺れる特異な年となった。
そしてその傾向は2020年にも引き継がれる。

参照 : 2019年秋,河口狭まる


■ コメント欄についての注釈

● 日付について
"/" は"月"と読み換えてください。
"","",""は,それぞれ"上旬","中旬","下旬"を意味します。
● 数値について
"河口水位"

国土交通省-北海道開発局による石狩河口水位観測所におけるデータです。
石狩河口水位観測所は河口から3kmの左岸に設置されています。
完全に感潮域にありますから,石狩湾の潮位の影響をもろに受けて,干満の動きにほぼ連動して水位も変化します。
石狩湾の干満の差は大きいときでおよそ30cm程度。(平常時の潮位は大雑把にいって 0cm〜30cm です)
石狩河口水位観測所の位況表によると,年平均水位は(多少のバラつきはありますが)ほぼ30cm前後です。
つまり河口から3kmしか離れていない石狩河口水位観測所の平常時の水位は,ほとんど石狩湾の潮位と変わりません。
ですから,河口水位がたとえば 80cm にもなると石狩湾の海面の高さより 50cm 高くなっているわけです。
0.5/3000 という高低差はここに限って言えば激流に相当します。

"最大風速"

気象庁によるアメダスのデータで,石狩の公式の最大風速値です。
ただし観測ポイントは生振にありますから,河口部における最大風速とは若干のズレがあるかもしれません。
なお,"最大瞬間風速"ではありません。

"有義波高"

国土交通省港湾局などにより構築・運営されているナウファス(全国港湾海洋波浪情報網)が設置した石狩湾新港波浪計によるデータです。
リアルタイムで有義波高と有義波周期が得られます。
● 河口水位の上昇の原因
川の水位が上がる原因は,通常はただひとつでしょう。流れる水嵩が増えると水位は上がります。
しかしここは感潮域。上流から流れてくる水だけではありません。海から逆流してくる水もあるのです。

【1】 融雪,降雨による流量の増加
    ごく一般的な水位の上昇です。

    ■ 河口砂嘴についていえば,この水位上昇では川岸が削られて後退します。

【2】 高潮(海からの逆流)による増加 (別の現象ですが,津波による逆流もあなどれません)
   ・強い低気圧による吸い上げ効果
   ・海から陸方向への強風(石狩湾の場合北西風)による吹き寄せ効果
   ・満潮
    これらにより海面が上昇して川を逆流することにより河口水位も上昇します。

    ■ 河口砂嘴についていえば,海からの逆流では先端が押しつぶされるように浸食されます。

【3】 ふたつが重なる場合
    発達した低気圧により高潮が発生するときは,同時に内陸部で大雨が降っていることもありえます。
(2017.05.31)

■ 背景画像についての注釈 (new)

使用した画像の作成には,すべて Google earth を用いています。
ただし作成時期の違いからその背景画像の取得日は
2017年までは 2016.09.27
2018年のみは 2018.09.20
となっていますので,画像に若干の違いがあります。
(2019.08.09)

さらに,2019年,2020年の傾向として先端部が浸食され続け砂嘴自体の長さも短くなりつつあります。
それに対応して2019年のデータから,画面の中心座標を1秒南に移動し,同時に縮尺をやや小さくして可視範囲を広げました(カメラの高さを800m→1000m)。
(2020.11.21)

■ 全画像をPDFファイル化しました

A4版用紙に4枚ずつ収めましたので,ひとつひとつはさほど大きくはありません。
2009年から2018年までの全10年分で,全部で1.1MBです。
こちらをクリックしてください ⇒ Summary-A18_Fig.pdf
(2019.08.09)

2019年分はお待ちください。


このページについてお気づきのことがありましたらお知らせください

砂嘴先端2014 砂嘴先端2015 砂嘴先端2016 砂嘴先端2017 砂嘴先端2018 定点観察
河口砂嘴の地形変化-総集編
(B) 石狩砂丘の堆積速度
河口での遭遇 : 目次