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石狩川河口での遭遇

番外 08

砂嘴先端2018 もくじ

2018.07.11 公開
2022.09.02 更新


砂嘴変化の調査はいよいよ10年目。
年次レポートページは,おそらくこれが最後になるものと思われます。


砂嘴先端2018年,6月までは典型的な夏型の動き

2018.07.11

【図A】 (クリックすると拡大)

一昨年(2016年)8月,3つの台風が連続して北海道を襲い,大雨により石狩川は大増水した
大量に流出したであろう漂砂の動きと比較的穏やかだった冬期の気象により,2016年秋からは,冬にもかかわらず川側から海側へと膨らむ例外的に夏型の動きを見せた
2017年,春の段階ですでに海側に充分張り出した地形となっていたため左右の地形変化には乏しく,替わりに先端が大きく伸び出す動きを見せた
秋以降は海側から川側へと押し戻される典型的な冬型パターンで推移した

そして今年(2018年),3月の段階で川側へ張り出した地形は春以降着実に海側へ押し返されて,6月末まで分かりやすい夏型の動きが確認されている。


7月,再び大増水,河口近くの川側激しい浸食を受ける

2018.07.12

【図B】 (クリックすると拡大)

近年なぜか異常気象が多いとはいえ,7月に入ってからの西日本豪雨には言葉を失います。
亡くなられた方々,被災された方々には,ご冥福を祈り,お見舞い申し上げます。


水位,潮位データ

A点から

B点から
A点からでは植生ごと削られている。
B点からでは植生はほとんどなく砂地である。
流れが速いので崩落が続き,崖際を歩くのは危険。
少なくとも亀裂から 1m 以上は離れて歩かなければいけない。

一方北海道でも7月に入って雨が降り続き,3日以降石狩川が大増水した。一昨年8月の連続台風による洪水にほとんど匹敵する。
増水が遅れてやってくる河口部では4日,5日に最大で110cmの水位が記録された(石狩河口水位観測所)。
いくらか落ち着いた6日昼前,浸食の度合いを確かめ,2016年8月の大増水時と比較してみた。
いずれも歩いたのは大増水の翌日。それぞれおよそ1ヶ月前に比べてどのように変化したかを重ねあわせてみた。

2016年8月では最大で約60m川岸が削られて後退。
2018年7月では最大で約40m川岸が削られて後退。
ここで見る限りでは2016年の方が浸食が厳しかったといえる。
2016年8月の河口水位観測所での最大水位は119cmで,今回よりやや高かったことに依るのかもしれない。

興味深いのは浸食直後の川岸汀線のラインが,2016年と2018年とでほとんど変わらないということ。
この程度の河口水位上昇で川岸が凹む限度はおよそこのラインまで,なのかもしれない。
自分が歩いた2009年以降の砂嘴の全軌跡のもっとも内縁に位置していることからも頷ける。
ただしこの10年間で河口水位が最も上昇したのは2016年8月の119cm。これ以上高かったことはない。
しかし河口水位観測所のデータが見られる1974年以降での最大水位は1981(S56).08.05のなんと156cm。
このくらいの水位になると一体どうなるのかは,自分には予測つかない。
(今回の本町船着場の道路冠水よりもさらに40〜50cm水位が上昇した光景を想像してみたりする)


7月末,いきなり砂嘴が伸びる

2018.08.05

【図C】 (クリックすると拡大)

6月末までは標準的な夏の動きで経過したあと,7月初めの石狩川の増水で川側が大きく浸食された。

おそらくかなりの量の漂砂が供給されたに違いない。
さらに7月後半は海況が穏やかで河口テラスへの堆積作用が働いたのだろう。
7/30 砂嘴先端が突起状におよそ120m伸び出しているのが確認された。
その動きを,直前に歩いた 7/17 での軌跡と比較して示す。
Topics では 7/6 の軌跡と比較しているが,軌跡に大きな違いはない。
また,”ワシ”についても7/31版を参照していただきたい。


突起

突起,中海,小島

突起,小島
左図はいずれも 7/30 における画像である。
砂嘴が伸びると同時に,取り残された海が中海となり,さらに離れ小島もできているのが分かる。

D点から (7/25)
実は予想外に砂嘴が伸びていることを知ったのは河口右岸からの夕陽を撮りに行った 7/25
ワシが休んでいた流木がしっかり確認できる。
またこの画像では,ワシではなくアオサギが3羽写っている。

C点から (7/17)

E点から (7/30)
さらに偶然にも 7/177/30 とに,ほとんど同じアングルからの画像があることに気づいた。導流堤の先端方向を見通した先が,雄冬岬と愛冠岬とのちょうど真ん中になっている。
7/17 の時点では先端の伸びはまったくみられないのだが,よく見るとワシが休んでいた流木が海面上にしっかりと突き出ていることが分かる。
ということはすでにかなり浅瀬化していたことを意味する。
(赤丸印はいずれもワシが休んでいた流木)
さらに同じアングルの偶然が重なる。他のサイトの画像につき勝手にここでお見せできないのでリンクしてご覧いただきたい。
いしかり海辺ファンクラブのブログ,第3回クリーンアップゴミ拾いにある最初の画像である。(必要と思われる情報を入手することに躊躇ってはいけない)
水平軸がやや傾いているのが惜しいが,手前のハマニンニクとか転がっている流木とかの構図まで,7/17C点からの画像とあまりにも酷似していることにあらためてビックリポン。
ゴミ拾いが行われたのは2日後の 7/19 という。ワシが休んでいた流木までには達していないが40〜50mに渡って島状に陸化していることが見て取れる。
海岸に繋がったのは 7/20 以降だろうが,7/25 にはすでに長く伸びていたわけなので,このころ急激に堆積が進んだものと思われる。


2018.08.17
2018.08.19
【図D】差し替え,8/18の結果を追加

【図C】のピンクの四角部分のみを拡大≫
【図D】 (クリックすると拡大)

8/6夕方,再度砂嘴の状況を確認に向かう。
7/30 に比べて,突起部分がやや左(西側)にぶれながら広がっている。長さはおよそ120mのまま変わらない。
7/30 の離れ小島は,突起部分の根元に吸収されたもよう。
かわりに先端近く左側に別の小島が2つできていたが,このあたり全体に浅瀬で,潮位が10cmも下がるとすべて繋がってしまうものと思われた(浅瀬を長靴でさぶさぶ歩いた軌跡も示してある)。
8/6 のハイライトは,なんといっても日没時,突起の中ほどから観察した”だるま太陽”(だるま夕陽)である。
だるま太陽の観察ポイントも【図D】に明示してある。
だるま太陽について詳しくはコチラを。
8/9から8/17まで連日降雨。さらに8/16から8/17にかけて波も高かった。
8/18 ようやく天気も回復したので歩いてみた。
川の増水と海の荒れの相乗効果なのだろうか,突起は根元の部分を残して消えていた。
根元も総じて川側から海側に押し出されている。
中海はすっかり干上がっていた。


2018.08.31
2018.09.09 【図E】差し替え,9/5の結果を追加

≪中心座標をやや西側へ移動≫
【図E】 (クリックすると拡大)

8/28物好きにも再度,砂嘴の状況を確認に向かう。
8/18 には消えていた突起が復活していた。
長さはやや短いとはいえ,水面上の突起の幅はこれまでより遥かに太い。
さらに,7月初め以降のこの2ヶ月も突起を含めて典型的な夏型の動き(川側から海側へと押し出す)が継続していることがよく分かる。


突起の先端から

細長い浅瀬
突起の先端には小さな離れ小島ができていた。突起との間に海水の流れがあったが,深さは20cm程度。渡ることができた。
突起の横に細長い浅瀬が確認された。水面すれすれでほとんど水没していたが,こちらにも渡って歩いてみることができた。
突起本体はもとより,これらの小島や浅瀬は潮位の高低で水面上に現われたり水没したりするので,その日の潮位表を確認して潮位のできるだけ下がる時間帶に訪れることが望ましい。高気圧下にあるともっとよい。
クリックすると私が・・・

9/5未明暴風台風21号が北海道の西側,日本海を北へ向かって駆け抜けた。
石狩でも最大瞬間風速22.2m/s。南風だったので波の吹き寄せはさほどでなかったと思う。
低気圧による吸い上げ効果で潮位は最大で80cmほどになっていた。
午後,ある程度風もおさまったので状況確認に歩いてみた。
台風は温帯低気圧に変わったとはいえ,歩いた時点では中心気圧974hPaでサハリン西に頑張っていた。
その結果 8/28に比べて潮位が30〜40cmも高く,波も荒かった。
突起は健在だったが,【図E】で分かる通り,細く,短くなっているのは潮位と波に制約されたものと考えられる。
同じ流木の姿により潮位の違いが如実 ⇒ 8/28 vs 9/5




C点から (8/6)

C点から (8/18)

C点から (8/28)
8/6,18,8/28C点(【図D,E】)と,7/17C点(【図C】)からの画像はほとんど同じ場所で,構図もほぼ一致させてある。
8/6 には 7/30 の時と同一と思われるワシが別の流木の上で休んでいた。
(赤丸は7/30,青丸は8/6,それぞれワシが休んでいた流木である)
8/18,28 には赤丸の流木もすっかり海の中で近づくことはできなかった。


9月,突起のレベルを超えて砂嘴本体の伸長と見なしうる

2018.09.17 【図E】 9/12 の結果を追加し,縮尺を変更

【図F】 (クリックすると拡大)

前回9/5は潮位が高かったために先端に伸び出した突起は痩せ細っていた。
その直後の9/6,胆振東部地震が襲いかかる。しかし津波はなく,気象的にはその後も比較的穏やか。
1週間後の9/12,歩いてみる。
突起の長さはあまり変わらないが,幅はぐっと広がり先の方でも30m以上。
そしてなにより砂浜の微高地形である汀段(バーム)がしっかりと形成されていた。
通常,汀段より前(海側)を前浜,後ろ(陸側)を後浜と呼ぶ。
後浜には乾燥,塩分に強い海浜植生が進出しうる。
ここはもはや突起ではなく,砂嘴本体と見なして差支えないだろう。


砂浜海岸の縦断形
この日の汀段をさまざまな角度から撮ってみた。高さは数10cm。高いところでおよそ50cm。
最後の図は砂浜海岸の縦断形を示したもので,簡潔でとても分かりやすい図であることから引用させていただいた。
出典:「砂浜海岸での野外学習に関する自然地理学的考察

またこの日,海沿いには離れ小島が6ヶ確認された。
いずれも汀線からは至近距離。
愛用の目盛付き流木杖を駆使してすべての小島に渡りその輪郭を確認することができた。
小島ab小島c小島def

Google Earth の背景画像はほぼ2年前の 2016.09.27 であるが,先端位置で約120m伸びている。
今年の 7/6 に比べてもおよそ70m長い。
海から運ばれてこれだけの砂が堆積したわけだから,それに見合うだけの沿岸漂砂が供給されていたことを意味する。
しかしこの地形も,冬期には大きく浸食されることになるだろう。


9月末以降・・・”冬”の動き,はじまる

2018.11.30

【図G】 (クリックすると拡大)

砂嘴先端の季節的変化は,年によって異なることもあるが,おおむね次のように括ることができる。

4月から9月まで 夏季のパターン 3月末から動きが始まる
10月から3月まで 冬季のパターン 9月末から動きが始まる

これに倣って9月末以降現在(11月末)までの今年の動きを確かめてみたのが【図G】である。
先端が湾曲して伸びた 11/7(参照:Topics) はやや例外的ではあるが,先端部(A)については明らかに冬季の特徴である”左から右”動きを確認できる。
それに対し,先端より100〜200mほど離れたあたり(B)については反対の動きが見られる。
特殊な動きと考えられるが,【図F】に比べてもかなり喰いこんでいるのでこの傾向がさほど長引くとは思われない。

Pa から

Pb から
その結果,ABに挟まれたエリアにはくびれが生じ,浸食も進んでいる。
左の2枚は11/25,【図G】PaPbからそれぞれ下,および上を見た画像である。
11/25には先端に大きな島も出現した(参照:Topics)。


10月から翌年3月 (冬季)

2019.03.24

【図H】 (クリックすると拡大)

【図G】(9月末から11月)においてすでに冬季の動きが垣間見られた。
その後も含め,10月から3月までの変化をまとめたのが【図H】である。

C部では先端が浸食されて押しつぶされる動きが顕著。(変化幅 約100m)
D部では砂礫の堆積により押し出されて川幅を狭める動きが顕著。(変化幅 約50m)
いずれも冬型の特有の動きである。
だだしどちらも,10,11,12月は変化量が小さいのに対し,1月を境に2,3月の変化量が大きい。
年末,そして年が明けてからの波浪が強まり,浸食と砂礫の運搬が大きくなったことの表れとみることができる。

E部は【図G】でのB部に相当する。
先に触れたように,12月までは左方向への動き(通常とは反対のパターン)が続いたが,1月からは右への動き(通常の冬のパターン)に転じている。


冬季の浜崖浸食

2019.03.29

【図I】 (クリックすると拡大)

浜崖の浸食が確認され始めたのは2018年11月末。
本格的には年末ないし年が明けて(2019年)からである。

【図I】に,この冬季間に浜崖が浸食された6箇所(af)を示す。
浜崖浸食箇所のそれぞれ両側には,多かれ少なかれ崖下ないしバームの浸食部分が連なるが省いている。

これらの位置の多くは,2016年前後から定点観察のページで,崖下に植生が進出したのに伴って浜崖が前進する予兆を見ていたエリアに重なる。(ただし下表のA,B,Cエリアと【図I】におけるA,B,C表示のエリアとはまったく異なる。紛らわしくてゴメン)

今回の浸食箇所 浜崖前進エリア
a A
b B
cd C

2016年ころから浜崖が前進する勢いをみせていたあたりが,逆にこの冬浸食され後退したわけである。
浜崖は微妙に前進,後退を繰り返しつつも,近年においては長期的な目で見ると後退局面にあることは否めない。

なお,ad 以外の今回の浸食箇所について。

e は 河口地区南端線近く(約80m)。監視員氏により崖上に立派な立入禁止柵が設置されていた部分に重なる。
柵は手前1/3ほどを残して無惨に崩壊している。

f は 逆に河口地区南端線より南側。(自分の調査範囲は河口地区南端線より北,つまり砂嘴先端方向と決めているが)
数年前からマウニの丘脇の浜崖浸食が厳しく,市道灯台線との間隔がすでに数mになっていて危ないので時おりチェックしている。
この冬の浸食箇所はやや北側にずれていたため市道への直接の被災はなかったのが幸いである。

【図I】に示したA,B,C表示のエリアについて。

Google eartn の背景画像(2016.09.27) の地形と現在(2019.02.25) の地形とがかなり乖離している部分である。
A,B については 【図H】 で最近6ヶ月の動きが読み取れる。
どちらもこの冬季間で外側に膨らんでいる。
実は C についてもおよそ30mほど川側へ張り出しているが,これも2018年11月末以降の動きである。
今後増水により川の勢いが強まった時に削られることが予想される。

浸食エリアの画像とコメント (2019.06.27) (6/28追記)
a
2018.12.21

2019.01.08

2019.01.19
2018年11月半ば以降バーム(汀段)の浸食が始まった。
おそらく年末(12/28,29)から2019年初めにかけて浸食は浜崖にまで及んだと思われる。
しかし1/8には浸食は収まっていたとみられ,その後浜崖の状況に変化はない。
b
2019.01.08

2019.01.19

2019.01.27

2019.02.25
2018年12月には汀線が近づきつつあったが,強く浸食されたのは年末から2019年1月にかけて。
2月には収まる。
【図I】における浸食範囲がやや長すぎるようにも思われ,検証の必要あり。
c
2018.12.21

2019.02.18

2019.03.09
2018年末にはバームの浸食程度。
浜崖前進エリアの強い浸食は年明けから。もともとの浜崖にまで達する浸食はほとんどない。
d
2018.12.06

2018.12.21

2018.12.21
2018年11月以降バームの浸食がはじまる。12月,浸食は一気に浜崖まで及ぶが,年明け後はほとんど変化なし。
浜崖が前進していたエリアだったが,せっかくの前進部分のかなりが持っていかれた。
e
2019.01.08

2019.01.14

2019.01.27

2019.02.11

2019.02.25

2019.03.09
設置されている立入禁止柵は前年までにすでに一部崩壊していた。
新たに浸食が始まったのは2019年1月後半から2月にかけて。もっとも浸食が長引いたエリアといえるが,3月には汀線も退きほぼ安定。
f
2019.01.14

2019.01.19

2019.02.18
(自分の守備範囲外なので2018年中の記録は取れていないが) おそらく浜崖浸食は2018年末から始まり2019年1月中継続したものと考えられる。2月には収まっていた。



No. 001 〜 010 No. 011 〜 020 No. 021 〜 030 No. 031 〜 040 No. 041 〜 050 No. 051 〜 060 No. 061 〜 070
砂嘴先端2014 砂嘴先端2015 砂嘴先端2016 砂嘴先端2017 定点観察
河口砂嘴の地形変化-総集編
(A) 先端部の季節的変化
河口砂嘴の地形変化-総集編
(B) 石狩砂丘の堆積速度
河口での遭遇 : 目次